Phenom II X4 965の性能はオーバークロックで4G!まだまだ使える
「Phenom II X4 965 Black Edition」の限界性能を見極めるべく、今更ながらオーバークロックで攻めてみた結果、何とか4Ghzを達成する事ができましたので、Cinebench R15でのベンチ結果と共にリポートしたいと思います。
当方は2016年発売の、APUの最高峰「A10-7890K」も所有しているのですが、OCしたPhenom II X4 965 の性能はそれを超えていて、まだまだ使えると確信しました。
そして一部で期待されている6コア化ですが、これは無理な話ですので、その件についても説明したいと思います。
目次
Phenom II X4 965 のスペックと使用環境
2009年8月13日に発表されたTDP140W版がPhenom II X4 965の第1弾で、当時のAMD CPUラインナップの中では最高動作周波数でした。
そして同年11月4日に、TDP125W版がラインアップに追加されました。
歩留まりが向上して、低い消費電力でも動作するようになったのでしょう。
両者の見分け方としては、OPN(Ordering Part Numbers)の末尾が「I」か「M」かで判別できます。
当方の965BEはOPNが「HDZ965FBK4DGM」となっていて、末尾がMなので、125Wバージョンとなります。
965BEの基本スペックの中で代表的な項目を挙げると
- 動作クロックが3.4Ghz
- Deneb(デネブ)コア採用
- 3.4Ghz稼動時の動作電圧は1.4V
- ベースクロック200Mhz
- BE(Black Edition)なので、倍率可変
となります。
そして環境は
- MBがASRockの「970 Extreme3」
- メモリはDDR-1333 8GB * 4
です。
【自分用メモ】
970 Extreme3のUSB3.0コントローラーは、Etronの「EJ168A」。
ドライバのダウンロードは Etron EJ168 USB 3.0 Host Controller のページへ飛び、左メニューの「Driver Download」をクリックすれば、"SETUP_0.119.zip" がダウンロードできる。
定格の3.4Ghzで電圧下げ・CINEBENCH R15
まずは定格の3.4Ghz動作で、どれだけCPU電圧を下げられるかを測定しました。
クリアの基準としては、Prime95を1時間エラー無しならOKとしました。
K10statでCPU Voltageを1.1750に設定してPrime開始、CPU-Z読みでは1.200Vとなりました。
残念ながら30分でエラーを吐きました。
もう1段階CPU電圧をアップして1.1875Vとし、CPU-Zで1.216Vという条件だと、見事1時間走破しました。
電圧読みは、1.208Vになる時もありました。
このように定格より随分電圧を下げても動作する事が確認できました。
Cinebench R15で、CPUのSingleとMultiのベンチを測定した結果はこのようになりました。
3.8Ghzへとoverclock
この結果からかなりOC耐性があると判断し、次は3.8Ghzへと挑戦しました。
K10statで1.3000V、CPU-Z読みで1.336Vだと、Primeが30分でエラーとなりました。
もう1段階電圧をアップして1.3125Vとし、CPU-Zで1.352Vという条件だと、1時間エラー無しで完走しました。
CPU電圧は1.344Vとなる時もあります。
まだまだ定格の1.4Vさえかけていない段階で、このように良好なオーバークロックができます。
3.9Ghz
4Ghzの大台の前に、3.9Ghzで様子を見てみる事に。
3.8Ghzをクリアしたのと同じ電圧でPrimeを試みると、3分でOSの再起動がかかってしまいました。
なので1段階電圧をアップして1.3250Vとし、CPU-Z読みで1.360Vという条件にしたところ、1時間完走しすることができました。
3.8Gより0.0125Vアップしただけなのにクリアした事により、4.0Ghzでの安定動作も確実だと思われました。
Cinebench結果です。
シングルが100を達成しました。
4.0Ghzでは安定しないが、常用可能
ところが4Ghzにしたとたん、どんなに電圧を上げても中々Prime1時間を完走しません。
K10statで1.4500V、CPU-Z読みで1.504Vにまで上げてもエラーが出るのです。
CPU電圧は1.496Vとなる時もあります。
これ以上は危険かもしれないという事で、ここでストップしました。
CPUの消費電力は、電圧の2乗に比例し、動作周波数に比例します。
「定格1.4V・3.4Ghz」での消費電力がTDP通り125Wと仮定すると「1.5Vで4.0Ghz動作」という条件だと
125 * 1.5*1.5 / (1.4*1.4) * 4.0 / 3.4 = 168.8W
もの消費電力となっているからです。
もしかしたらマザーボードがCPUに提供する電圧が原因の可能性もあります。
970 Extreme3 の電源フェーズは5個ですが、内訳は(4 + 1)となっており、つまりCPUに電圧を供給しているフェーズは4個です。
たった4個のフェーズでとても168Wを安定して供給できるとは思えません。
実際K10statでCPU電圧を1.5Vまで上げた時は、CPU-ZでのCPU Voltageはかなり不安定で、4種類の値を入ったり来たりしていましたし。
石の限界なのかMBの限界なのか、何とも判断しがたいところです。
とはいえ、Primeのように全コアに100%の負荷がかかる事は通常操作においては稀なので、この4.0Ghzで常用しても問題はないでしょう。
実際3.4Ghzの時と比べると、IE11で重いサイトを閲覧した時に画面スクロールが可能になるまでの時間が明らかに早くなり、非常に快適です。
オーバークロックまとめ表
800Mhz、2.2Ghz、2.7Ghz についても調査し、まとめた表は下記になります。
動作周波数 | K10statでのCPU電圧 | CPU-ZでのCPU電圧 | 状態 | Single | Multi |
---|---|---|---|---|---|
800Mhz | 0.7250 | 0.728 | 3分でOS再起動 | - | |
0.7375 | 0.736 or 0.744 | 60分OK | |||
2200Mhz | 0.9375 | 0.944 or 0.952 | 15分でOS再起動 | ||
0.9500 | 0.960 or 0.968 | 60分OK | |||
2700Mhz | 1.0250 | 1.040 | 55分で再起動 | ||
1.0375 | 1.056 | 60分OK | |||
3400Mhz | 1.1750 | 1.200 | 30分でエラー | - | |
1.1875 | 1.216 | 60分OK | 88 | 341 | |
3800Mhz | 1.3000 | 1.336 | 10分でエラー | - | |
1.3125 | 1.344 of 1.352 | 60分OK | 98 | 377 | |
3900Mhz | 1.3125 | 1.352 | 5分で再起動 | - | |
1.3250 | 1.360 or 1.368 | 60分OK | 100 | 386 | |
4000Mhz | 1.4500 | 1.496 or 1.504 | 10分でエラー | 102 | 395 |
Phenom II X4 965 は6コア化できない
4コアのPhenom II X4 965ですが、6コア化できるという説も飛び交っています。
しかしそれは間違った情報です。
「Phenom II X6」シリーズでは、6コアのThuban(トゥーバン)コアが採用されました。
そのThubanコアをベースに2コアを無効にし、4コアとしたのがZosma(ゾスマ)コアとなります。
Zosmaコアを採用したモデルは「Phenom II X4 960T Black Edition」です。
ですので、この「960T BE」なら、BIOSで該当する項目をEnabledにする等の処置をとれば、個体によりますが6コア化する事が可能です。
「Phenom II X4 965」はネイティブ4コアのDeneb(デネブ)ですので、どうやっても6コアにする事はできません。
このように970 Extreme3のBIOS(UEFI)で「CPU Active Core Control」を有効にしても、当たり前ですが4コアしか現れませんので。
まだ使えるPhenom II X4 965
A10-7890Kの性能をベンチマークで測定。Phenom比較で脅威の低消費電力
を見ていただければわかるように、APUの最高峰「A10-7890K」のCinebench R15の結果は、96と338です。
965をオーバークロックすれば、それを上回るスコアを叩き出す事ができる事が判明しました。
A10-7890KのTDPはiGPU込みで95Wなので、消費電力の低さでは勝てないと思うかもしれませんが、965には必殺のK10statが使用できます。
これによって、A10-7890KのCool 'n' Quiet任せの設定よりも、CPU単体ではより低い消費電力で常用できる可能性があります。
何せ800Mhzで0.75Vの時のCPUの消費電力は計算上は
125 * 0.75*0.75 / (1.4*1.4) * 0.8 / 3.4 = 8.4W
と、驚異的な低さですので。
RYZENに移行するにこした事はないですが、そうでない人は、まだまだ使えるPhenomIIで頑張るのも手かもしれません。
Phenom最高クロック3.7Ghzを誇るPhenom II X4 980が入手できれば、よりOCできたり、または電圧を下げられたりするので是非入手したいのですが、中古はおろかオークションでさえも見かける事がなくて残念です。
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